ファブリックはリネンツイル。リネンは短繊維素材名、ツイルは製織組織名。「リネン」日本語では「亜麻」（あま）。リネンは春に発芽し花を咲かせ実をつけます。一年草なので結実した後は枯れます。また、寒冷な場所でしか育ちません。日本各地に漏れなく育成したヘンプとは異なり、リネンは日本では北海道のみ、欧州では北部の特産品でフランス北部のフレンチリネンが有名です。育成や、特に繊維を取り出す加工の際に清潔な流水を大量に必要とするので、アルプスと雪解けの冷水が流れる河川を抱える地域特性が高品質なリネンの特産地となった所以です。現在ほど交通・輸送網が発達していなかった過去においては、国や地域の風土によりその地の生産品が特色づけられました。ファブリックやガーメントとは違いますが、精密な腕時計がスイス製である事もまさに水が関連しています。微細な腕時計のパーツを削り出したり研磨した後に洗浄が必要です。パーツの精度を保つためには、ミクロのゴミも含んでいない純水に限りなく近い水が必要です。もし、それが手近になければ純水を大量に時間とお金をかけて造り出すところから始めねばなりません。また、普段雨が少なく飲み水が貴重な地域であればそのような製品の加工にジャブジャブ水を使う事など考えられません。フレンチリネンの場合と同じですが、背後にアルプスを抱くスイスは豊富に高品質な水があったので時計工場が発展していった訳です。